ブルー・佐藤のひとりごと

物理数学、政治など… 森と泉に囲まれて静かに眠りたい

台風シリーズ第3弾 ~台風+前線→大雨?~

10月も後半、かなり涼しくなってまいりました。

 

関東などでは金木犀の香りが漂い、北海道からは初氷の便りも届いています。

 

そんな季節の歩みが喜ばしくもある中、先日の台風19号により亡くなられた方とそのご遺族の皆様に謹んでお悔やみ申し上げてます。

そして、被災された皆様にお見舞い申し上げます。

 

今回はその東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号について振り返りたいと思います。

 

台風19号の振り返り

先日の記事でも述べたように、台風19号大型であり、強い勢力で東日本へと上陸しました。

 

風も然ることながら、何と言っても大雨による被害が特徴的でした。

 

各地で降水量の観測史上一位の記録更新し、

多摩川入間川阿武隈川千曲川阿賀野川など、東日本の各地の川で決壊氾濫が発生し、多数の死者・行方不明者、負傷者や、住宅の浸水などの被害が出ました。

 

この大雨の原因は恐らく台風に伴う暖気と、シベリアの高気圧からの寒気が衝突したことや、関東山地の地形などの要因により雨雲発達したことにあると思われます。

 

台風は本来暖かい海域で渦を巻きながら水蒸気をたっぷり含んだ空気が上昇し、上空で冷やされて積乱雲の塊が出来ているわけですが、上陸する頃はその暖かい空気を残しつつ北から寒気が押し寄せてきました。

そうなると、大気はとても不安定となり、ますます積乱雲が発達し、途轍もない大雨をもたらしたという訳です。

そして、台風大型であるがゆえ、その大雨長時間続きました。

川の水位はぐんぐん上昇し、氾濫したり、中にはその水圧に耐えられず決壊してしまった川も幾つかありました。

 

大雨だけなら酷くても一部が冠水する程度で済むことが多いわけですが、一度氾濫するとその水害の及ぶ範囲広大なものとなります。

 

下流で雨が止んでも上流で雨が降っていれば、川の水増えることがあります。

したがって、大雨警報が解除されたり、雨が止んでから暫く経っても、洪水警報解除されないということは大いにあり得ます。

 

洪水警報解除されるまでは、川に近づかないようにしましょう。

 

台風20号と台風21号の動向

10/20現在、太平洋上に台風20号台風21号があり、日本列島にも接近すると予想されています。

 

そして今、日本の南には前線停滞しており、台風北上と共に前線北上し、太平洋沿岸を中心に大雨となる可能性もあります。

 

台風20号日本列島接近する頃には、温帯低気圧に変わると予想されていますが、先述の通り、前線と共に太平洋沿岸を進み、大雨をもたらす可能性があります。

 

また台風21号日本列島南東進み上陸する可能性低いと予想されているようですが、発達し、勢力強くなると予想されており、太平洋沿岸、特に外房などではがかなり高くなる可能性があります。

また、この台風のもたらす暖かく湿った空気の影響で、先述の低気圧前線活発になり、大雨の要因となりそうです。

 

台風と前線

過去にも、前線台風のコラボにより大雨となり、大きな被害が出た例が沢山あります。

例えば、平成23年7月新潟・福島豪雨は停滞していた梅雨前線活発になったために起きましたが、この活発となった原因の一つに、南の海上にあった台風湿った空気があったと言われています。

この豪雨により、住宅など約8000棟床上・床下浸水などの被害が出たほか、只見線2019年10月現在一部区間不通となっています。

このように、前線台風の組み合わせは豪雨をもたらす可能性があります。

台風勢力比較的弱くても大雨となる可能性大いにあります

 

からでも出来ること沢山あります。

ハザードマップ確認など、自然災害への備えを心がけていただければ幸いです。

 

そろそろ台風以外のネタ書かなきゃ…

あの台風15号より危険!? 台風19号の脅威

環境が新しくなったり、風邪をひいたりで久々の更新となってしまいました。

季節の変わり目、皆さんも体調を崩さぬようお気を付けください。

 

この間の台風の記事は単発でシリーズ化する予定ではなかったのですが、あまりにも危険な台風19号の登場につき、急遽台風に関する記事の続編を書くことといたしました。

お時間がありましたら前回の内容も是非お読みください。

bluesatoh.hatenablog.com

 

それでは内容に入りたいと思います。

 

台風19号はどんな台風?

台風19号はアジア名「ハギビス」("Hagibis")で、これはフィリピン語で「すばやい」という意味のようです。 [1]

 

10月10日0時現在、台風19号は小笠原近海にあって、中心の気圧は 915 hPa、中心付近の最大風速は 55 m/s、最大瞬間風速は 75 m/sの、大型猛烈な台風となっています。[2]

 

台風19号の最新の情報はこちら→気象庁 | 台風情報

https://www.jma.go.jp/jp/typh/images/zooml/1919-00.png

 

気象庁の進路予想図をご覧頂ければ分かる通り、この台風19号関東地方接近上陸する恐れがあります。

しかも、先月台風15号の被害を受けた千葉県伊豆諸島はこの図の中心を結ぶ線より右(東)側にあるため、危険半円に入る可能性が高いと言えます。

台風15号台風19号はほぼ同じコースをたどることが予想されています)

さらにこの時期は9月よりジェット気流偏西風)が強い傾向があるため、日本付近でスピードアップすることが予想されます。

実際、気象庁の予報によると、12日21時時点で、北北東に 30 km/h [2] と比較的速い速度で進むことが予想されています。

スピードアップするということは、早く去ってくれるように感じますが、スピードアップすればするほど、危険半円での風速増す傾向にあります。

このことについては、冒頭で紹介した先日の記事

危険半円と可航半円 ~台風15号はなぜ千葉県に甚大な被害をもたらしたか~ - ブルー・佐藤のひとりごと

をお読みいただければご理解いただけるかと思います。

 

台風15号との相違点

台風15号との相違点の一つは大きさにあります。

https://storage.tenki.jp/archive/satellite/2019/09/08/15/00/00/japan-near-large.jpg

9月8日15時の衛星画像 [3] 関東の南岸、八丈島付近に台風15号がある。

 

https://www.jma.go.jp/jp/gms/imgs/0/infrared/1/201910100110-00.png

10月10日1時10分の衛星画像[4] 小笠原近海に台風19号がある。

 

台風19号はまだ日本から離れており、二つの画像はスケールが違うので若干分かりにくいかもしれませんが、台風15号と比べると、台風19号のほうが大きいことが分かります。

実際、台風19号は先述の通り大型の台風です。

つまり台風による影響広範囲に、そして長期に及ぶ恐れがあります。

 

さらに、前線などの影響で、台風接近する前から大雨が降る恐れがあります。 

 

更に季節は冬に近づいており、シベリアには寒気を伴った強い高気圧があるため、可航半円と言われる西側でも気圧傾度大きくなることにより、風が強くなる恐れがあります。

もう少し簡単に言い換えると、気圧高低差大きい風が強くなるということです。

例えば、地図上で等高線が密なところでは坂が急なので、もしそこに川があると速く流れるでしょう。

それと同じような感覚と言えます。

f:id:bluesatoh:20191010005705p:plainf:id:bluesatoh:20191010005716p:plain

等高線とその断面図のイメージ 等高線が密なところは坂が急である

さらに台風がもともと持っている南からの暖気とシベリアからの寒気がぶつかることで温帯低気圧に変わっても、ある程度勢力を維持し、再発達する恐れもあります。

したがって台風が去り、温帯低気圧に変わった後も風が強く吹く恐れがあります。

 

そして台風15号は通過後に酷暑が襲ったのに対し、台風19号の通過後は先述のシベリアの高気圧との関係により、西高東低冬型の気圧配置となり、北日本の山間部ではが降る寒さとなる可能性もあります。

 

どう備えるか

もし、土砂災害洪水などのリスクがあるところに住んでいるようであれば、早めの避難を検討した方が良いでしょう。

物が飛んできて窓ガラスが割れる可能性もあります。

接近前に雨戸・シャッターなどを閉めておくことをお勧めします。

そして数日分食料品水分確保しておきましょう。

また、大規模停電が起きる可能性があります。

特に、台風15号により被災した千葉県などは仮復旧の状態のところも多いでしょう。

台風19号によりまたすぐに停電してしまう可能性があります。

千葉県伊豆諸島などにお住まいの方は特に停電に備えてください。

携帯電話やその予備バッテリーをしっかり充電しておくとよいでしょう。

その他、大雨台風による災害とその対策についてはこちらの首相官邸のページも参考になると思います。

www.kantei.go.jp

 

今回の台風はとにかく危険です。

台風15号以上被害が出る可能性も大いにあります。

是非万全の備えをしてください。

 

参考文献

[1] 気象庁|台風の番号の付け方と命名の方法

[2] 気象庁 | 台風情報

[3] 過去の天気(気象衛星・2019年09月) - 日本気象協会 tenki.jp

[4] 気象庁 | 気象衛星

 

閲覧はいずれも2019年10月10日

微積と物理 1 平均の速度と瞬間の速度 ~微分~

今回は「微積物理」と題したシリーズの第一弾です。
本シリーズは、力学電磁気学などの物理学を題材として、微分積分学の初歩(高校~大学初年度レベル)を学べる内容にしたい思います。
書こうと思えば無限に書けるようなテーマなので、全部で何回になるかわかりませんが、今回と次回の2回分で微分積分がどんなものかは分かるような構成にしたいと考えています。
今回は速度をテーマに、微分について扱っていきます。

では内容に入ります。

速度(速さ)とは?

速度―それは速い・遅いを表す指標となる、とても身近で、物理が苦手な人にとってもそれほど抵抗感のない物理量でしょう。
自動車には必ず速度計がついていて、車を運転する人ならそれを目安に速度を出しすぎていないか確認することもあるでしょう。
(ちなみに私は滅多に車を運転する機会がありません。いわゆるペーパードライバーです。(苦笑))

ところで、その速度はどのように計算されるものでしょうか。
ここで一つ、小学校の算数で出そうな問題を例に考えたいと思います。

Q : 車が 3 時間かけて 150 km 移動したときの速さは時速何 kmでしょう。

A : \displaystyle \frac{150{\,\rm(km)}}{3{\,\rm(h)}}=50{\,\rm(km/h)} よって、 50 km/h (時速 50 km)

このように、ある決まった時間(例えば1時間とか1秒とか、これを単位時間と呼びます)にどれだけの距離進んだか、というのを表すのが速度です。
確かに、同じ時間であれば遠くまで移動できる方が速い、というのは直感的にも納得できますから、この定義は妥当なものと言えるでしょう。
ちなみにこれは、変化の割合(平均変化率)(恐らくこの言葉は中学や高校で耳にしたことがあると思います)の一種です。
ここでは、時間という変数に対する、距離という時間関数変化の割合(平均変化率)です。
ここで一旦関数というものについて簡単に確認しておこうと思います。

関数(函数)とは

関数とは、あるに対し、何らかの処理をして、あるを返すものです。

例えば、y=2x-1という関数を考えると、
x=1 を代入すると y=2 \times 1 - 1 = 1 を、
x=4 を代入すると y=2 \times 4 - 1 = 7 を返します。
このようにある変数xの値に対応して、yの値が定まるような関数について、「yx関数である」といいます。

中学の教科書などでは関数と表記されていますが、
元々は函数と書かれ、現在でも函数と表記されることが多々あります。

英語で関数を意味するfunctionの頭文字をとって、x関数f(x)と表記することもよくあります。
この表記を用いると、xに具体的な数値を代入したときに関数が返す値を表すときに便利です。
例えば、x=2のときに関数が返す値はf(2)のように表記できます。

今回の記事で扱っている、距離時間について考えると、例えば、1時間後に 50 km、4時間後に 200 km、などのように、任意の時間を指定することによって距離が定まるので、距離時間関数であるといえます。

平均の速度と瞬間の速度

さて、先ほどの例題に話を戻します。
計算の結果、車の速さは 50 km/h と求まりましたが、現実的には、ずっと 50 km/h で走っていたとは考えられません。
というのも、実際には赤信号では止まったり、 60 km/h まで加速したりすることもあるでしょう。
この 50 km/h というのはあくまで平均の速度というわけです。
つまり、一定速度で走っているとみなしたときの速度を考えているわけです。
これに対し、速度計の指している時々刻々と変化する速度瞬間の速度と呼ばれます。

ところで、その時々刻々と変化してしまう瞬間の速度はどうやって求めればよいでしょうか。
その問題を解決する鍵となるのが、今回の主役である微分です。

平均の速度から瞬間の速度へ ~微分

では、具体的に瞬間の速度を求める方法について考えます。
考え方は平均の速度を計算するときのものをベースにします。
平均の速度の計算において用いる時間をどんどん小さくしていけば、どんどん瞬間の速度に近づいていきそうです。
例えば、先ほどの例のように、3時間で進んだ距離を基に求めた速度平均の速度に他なりませんが、1秒間に進んだ距離を基に求めれば、平均の速度ではあるものの、瞬間の速度に近い値を得ることができそうです。
この時間極限まで短く、すなわち0に近づけていけば、それはまさしく瞬間の速度と言えるでしょう。

では、そのことを数式で表していきたいと思います。
まず平均の速度\bar{v}を移動した距離\Delta xとその移動にかかった時間\Delta tを用いて表すと、
\begin{align}
\bar{v}=\frac{\Delta x}{\Delta t} \tag{1}
\end{align}
となります。
先ほどの例では、 3 時間かけて 150 km移動したので、\Delta t{\rm 3 (h)} \Delta x{\rm 150 (km)}、そして\bar{v}{\rm 50 (km/h)}となります。

次に、時間を極限まで短くしていく、つまり\Delta t極限まで0に近づけることをします。
これを次のように書きます。
\begin{align}
v=\lim_{\Delta t \to 0} \frac{\Delta x}{\Delta t} \tag{2}
\end{align}
\lim極限を意味するlimitの頭3文字で、\displaystyle \lim_{\Delta t \to 0}\Delta t極限まで0に近づけることを意味しています。
ここで、この計算で求められるものはもはや平均の速度ではなく瞬間の速度なので\bar{v}だったものをvに書き換えました。

極限の厳密な定義として\varepsilon-N論法、\varepsilon-\delta論法というものがありますが、この記事では割愛します。
これらについて解説しているページはたくさんあるので、興味のある方は各自でお調べいただいても良いですし、いずれこのブログでも紹介したいと思います。
ここでは、\Delta tを0.1、0.01、0.001、…のようにどんどん小さくしていくぐらいのイメージで構いません。

このように、微小変数(ここでは時間t)の変化に対する、関数(ここでは距離)の変化の割合微分と言います。
つまり、(瞬間の)速度v距離x時間t微分したものです。

ところで先ほどの(2)式は次のように書かれます。
\begin{align}
v&=\frac{dx}{dt} \tag{3}\\
&=\frac{d}{dt}x \tag{4} \\
&=\dot{x} \tag{5}
\end{align}

(3)式はxt微分することを書くときに最も一般的な記法です。

(4)式はt微分するという操作をxという関数作用させることを表現した書き方です。
この書き方を用いるとxの部分がより複雑になったときに応用がききます。
例えば、x\displaystyle -x+\frac{x^2+3x}{x-2}に置き換わった場合、

\begin{align}
v=\frac{d}{dt}\left(-x+\frac{x^2+3x}{x-2}\right)
\end{align}

と表せます。
この\displaystyle \frac{d}{dt}のように、ある関数作用させると微分をするようなものを微分作用素と言います。

(5)式は、時間微分時間微分)するときに用いられる記法です。

ほかにも時間関数ではなく、より一般的な関数f(x)x微分する場合は、f'(x)という書き方がよく用いられます。

計算例

最後に具体的な計算例を一つ示しておきたいと思います。
例えば、距離xが、x=t^2で表されるなら、
\begin{align}
v&=\lim_{\Delta t \to 0} \frac{(t+\Delta t)^2-t^2}{\Delta t}\\
&=\lim_{\Delta t \to 0} \frac{(t^2+2t\Delta t + \Delta t^2)-t^2}{\Delta t}\\
&=\lim_{\Delta t \to 0} \frac{2t\Delta t + \Delta t^2}{\Delta t}\\
&=\lim_{\Delta t \to 0} \left(2t+\Delta t \right)\\
&=2t+0\\
&=2t
\end{align}
となります。

後日グラフ等追加しようと思いますが、ひとまず暫定版として本記事を公開します。

11/4 更新 (早く第二弾書け)

危険半円と可航半円 ~台風15号はなぜ千葉県に甚大な被害をもたらしたか~

この度、台風15号により被災された方、特に甚大な被害の出ている千葉県、伊豆諸島にお住まいの方々にお見舞い申し上げます。
そして、一刻も早い復旧をお祈り申し上げます。

さて、今回はなぜ千葉県で大きな被害が出たのかという話を含め、危険半円可航半円について解説したいと思います。

まず、危険半円可航半円について説明する前に、台風がどんなものであるかということについて説明しておきたいと思います。

台風とは

台風とは、熱帯低気圧のうち、北西太平洋上(赤道以北、東経100°~180°)にあって、最大風速が風力8(34 ノット、約17.2 m/s)以上のものを指します。
熱帯低気圧とは、その名の通り、熱帯で発生する低気圧です。
海面水温の高い赤道付近の海上で上昇気流が発生し、次々と積乱雲が発達し、それらが渦を作ることで出来ます。
特徴としては、綺麗な同心円状の構造を持つことです。
気象庁の台風情報で、強風域や暴風域が円で表示されていますが、このように表示されるのは熱帯低気圧同心円状の構造を持っているためと言えるでしょう。

危険半円と可航半円

ここで本題の危険半円可航半円の話に入りたいと思います。
台風は、先述の通り低気圧の一種ですから、周囲から中心に向かって風が吹き込んでいます。一般に北半球では反時計回りに風が吹き込んでいます。(図中の赤い矢印)

f:id:bluesatoh:20190913163813p:plain

そのため、右側では台風の進行方向と風向が概ね一致し、風が強くなります。
船が台風の中心から遠ざかろうとしても、強い向かい風を受け、台風の前方に流されやすいため「危険半円」と呼ばれます。
逆に、左側では台風の進行方向と風向が概ね反対になるので、相対的に風が弱くなります。
船が台風の中心から遠ざかろうとするときに、追い風を受け、台風の後方に流されるため、「可航半円」と呼ばれます。

風の強さをボールの速さに例えると、危険半円動く歩道に乗りながら前方にボールを投げていて、反対に、可航半円では後方にボールを投げているようなイメージです。

数式で表すと、台風の中心に向かう風の風速のベクトルを \vec{v_w}台風の移動速度のベクトルを \vec{v_t} としたときに、その風速のベクトルは\vec{v_w}+\vec{v_t}となります。
ここで、\left|\vec{v_w}\right|=v_w \, , \, \left|\vec{v_t}\right|=v_tとすると、危険半円の風速はおおよそ v_w+v_t となり、可航半円の最大風速はおおよそ v_w-v_t となります。

これらの例えや数式からわかるように、台風の速度が速ければ速いほど、危険半円の最大風速が大きくなる傾向があります。
先日の台風15号の上陸時の速度はおよそ25 km/hでしたが、これを秒速に直すと約7 m/sです。
つまり危険半円では台風そのものによる風にこの7 m/s分が上乗せされ、逆に可航半円では差し引かれたというわけです。
冒頭でも述べた通り、この台風15号により、千葉県で甚大な被害が出ました。

https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/typhoon/T1915.png
(出典:気象庁

実際、経路図からわかるように、千葉県は一部を除き危険半円に入っていました。
そしてその千葉県では、最大風速、最大瞬間風速ともに、千葉県の各地で観測史上1位の値を更新するほどの強い風が吹きました。

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f:id:bluesatoh:20190913203736p:plain
(出典:気象庁、下記画像を基に佐藤が加工)

https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/periodstat/20190909a/20190909/24/pic/mxwsp0011.png
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/mdrr/periodstat/20190909a/20190909/24/pic/gust0011.png

この強い風により、送電線などが倒壊し、千葉県や伊豆諸島では停電などによる二次災害で、今もなお被害は拡大しています。
ちなみに千葉市で観測した最大瞬間風速57.5 m/sというのはkm/hに換算すると207 km/hです。
これは開業当初の新幹線のスピードに匹敵します。
つまり、壁や天井のない新幹線に乗っているような状態というわけです。
想像するだけでも恐ろしい世界です。

ここまで危険半円の恐ろしさについて述べてきましたが、その一方で可航半円であっても決して安全なわけではありません。
可航半円であっても中心付近は特に風が強く、危険であることに変わりありません。
ただ、危険半円ではより警戒が必要で、特に中心から離れたところでも風が強くなりやすいということをお伝えすべく、今回の記事を書きました。

最後に、改めて千葉県をはじめとする被災された各地域の復興をお祈り申し上げます。

2019年参院選を振り返る 1 ~組織票~

今回は「2019年参院選を振り返る」と題したシリーズの第一弾である。

その第一弾からややマニアックな内容ではあるが、ご了承いただけると幸いである。

ありふれたネタをやったってつまらないじゃないか。

というわけで今回のテーマは「組織票」である。

 

組織票」というとどのようなものを思い浮かべるだろうか。

有名なところだと公明党創価学会の関係だろう。

しかし創価学会員以外の方にも身近なところに組織票はある。

それは、労働組合である。

学生の方や一部の職種の方にはこれも身近な存在ではないかもしれないが、労働組合では特定の候補を支持していることが多い。

つまり労働組合がその候補の支持母体となっているわけである。

このブログをお読みになっている方の中にも、労働組合が推薦する候補に投票するように呼びかけられた経験を持つ方もいらっしゃるかもしれない。

 

さて、ここではその中でも地域性がはっきり表れていてわかりやすい例を紹介したいと思う。 

国民民主党礒崎哲史議員である。

礒崎氏は、元日産自動車社員であり、自動車総連の特別中央執行委員を努めた人物である。したがって自動車総連が支持母体となっている。

つまり自動車工場などのある市町村では得票率が高いのである。

では、2019年参院選のデータを基に、愛知県、栃木県、群馬県、神奈川県の各市町村における礒崎氏の得票率を地図で示したものをお見せする。

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愛知県

まずは愛知県、真ん中の北の方に大きく真っ赤なエリアがある。

そう、そこは何を隠そう豊田市である。

かつては「挙母(ころも)市」と名乗っていたが、1959年、トヨタの創業者である豊田氏から名前をとり、「豊田市」となった。ちなみに今でも豊田市中心部には「挙母」という地名が残っている。

豊田市トヨタやその関連企業に勤めている人が多く、10%近い得票率となっている。

豊田市は突出しているが、豊田市のみならず、愛知県は県全体としても自動車産業が盛んであり、どの市町村も全国と比較すると礒崎氏の得票率が高いのが特徴である。

 

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栃木県

続いて栃木県。

栃木の自動車メーカーと言えば本田技研工業である。

薄黄色くなっているところはホンダの拠点がある高根沢町で、隣接する自治体も比較的得票率が高い。

特に県庁所在地である宇都宮市は、人口が多く、他の職種に従事されている方も多いが、約3.4%というなかなかの得票率である。

その中でも11%超というひときわ目立つ数値を出したのが上三川町である。

実はここには日産の栃木工場がある。

日産と言えば礒崎氏の古巣であるため、労働組合による選挙運動はホンダ以上に活発であると思われる。

こちらも宇都宮市の得票率を引き上げる要因の一つであろう。

 

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群馬県

次は群馬県

こちらは太田市大泉町など、県南東部の得票率の高さが顕著である。

実はこの地域にはSUBARU(元・富士重工業)の生産拠点が集まっている。

中でも太田市の工場があるのは「スバル町」である。ここはSUBARUの工場以外は何もなく、居住者はいないそうだ。

 

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神奈川県


最後に神奈川県の例を紹介する。

愛知県、栃木県、群馬県と比べると県全体として得票率は低いが、県央部や横須賀市で得票率が高い傾向にあることがわかる。

厚木市伊勢原市の境には日産テクニカルセンター(NTC、住所は厚木市)が、横須賀市には日産追浜工場が、藤沢市にはいすゞの工場がある。

中でも伊勢原市と寒川町の得票率が高いが、これはあくまで総人口との関係で相対的に高く出ているものと思われる。

神奈川県の県央部は横浜や都内のベッドタウンとしての側面も大きく、また自動車業界以外にも様々な業界のメーカーの拠点が密集しているため、自動車メーカーの工場などがあっても、そこに従事している人の割合はそれほど高くはならず、得票率で比較すると、総人口が比較的少なめの自治体で高い傾向がある。(もっとも、これは神奈川県に限らずどこでも成り立つことではあるが、神奈川県ではその傾向が顕著である)

 

ここまで4県の例を挙げたが、組織票の影響力を実感していただけたことと思う。

元々の趣旨から逸れて自動車産業の紹介みたいになってしまった部分もあるかもしれないが、自動車メーカーの拠点があるところではっきりと得票率が高くなる礒崎氏は例として非常にわかりやすいと思ったので紹介させてもらった。

 

断っておくが、組織票を批判するつもりなど毛頭ない。

組織票」と聞いてあまり良いイメージを持たないかもしれないが、別に組織票自体は良いとか悪いとか言えるものではない。

しかし、最終的に誰に投票するかは個人の自由である。

匿名性も保証されている中、労働組合などの組織が推薦する候補に投票しなければならないなんてことはない。

特にこのような参院選の非拘束名簿式の比例代表制の選挙においては、その候補に票を投ずることにより、その候補が所属している政党・政治団体議席に貢献することになる。

もし、その候補が自分の支持していない政党・政治団体から立候補しているのであれば、再考すべきかもしれない。

 

そして、組織票とは無縁だと思っている皆さんも、「組織票」を作ってみてはいかがだろうか。

1人では1票の力しかないが、周囲に呼びかけることによってそれを10票にも、100票にもしていくことができる。

そしてそれがさらに外に広がっていけば、倍々ゲームの要領で10000票動かすことも夢ではないかもしれない。

政治への関心の低下は民主主義の崩壊につながる。

世間では政治の話はタブー視されがちかもしれないが、これからは積極的に政治の話をしてみるのも良いだろう。

(もしそれで友達を失っても責任は負いかねるが、政治的に意見が異なるぐらいで失ってしまうようなら、それはもはや友達と言えぬのではなかろうか)

 

次回のテーマは未定だが、2019年参院選から導入された特定枠などについて掘り下げたいと考えている。

それではまた。

TeXworksの知られざる(?)機能

最初の当ブログの紹介にあたり、主に物理数学、政治についての記事を上げるとか書いておきながら、いきなりそのどちらでもない記事です。(笑)

まあ、強いて言えばTeXは数式を記述する上でよく使うので、物理数学と無縁ということはないでしょうけれど…

 

さて、今回紹介するのは、TeXworksでコマンドを入力するときの裏技のようなものです。

それは・・・

コマンドのオートコンプリート機能です。

 

具体的にどういうものなのか説明していきたいと思います。

TeXのコマンドと言えば/(バックスラッシュ、円マークで表示されることが多い)で始まるわけですが、/の後にコマンドの頭文字を入力してTabキーを押すとコマンドが自動的に入力されるのです。

例えば、/だけ入力してTabキーを押すと/alpha、/rと入力してTabキーを押すと/ref{}となります。

このようにコマンドをすべて入力しなくてもTabキーを押すことで勝手に補完してくれるというわけです。

ただ、候補が出てきて選択するという方式ではないので、対応する頭文字を覚えていないと使えないという欠点があります。

 

ここでは、特に使えると思ったものを3つ紹介したいと思います。

 

  • /bal 

これを入力してTabを押すと

\begin{align}

 

\end{align}•

が出力されます。

 

  • /beq

これを入力してTabを押すと

/begin{equation}

 

/end{equation}•

が出力されます。

 

  • /beqn

これは/beqとほとんど同じなので想像がつくと思いますが、

/begin{eqnarray}

 

/end{eqnarray}•

が出力されます。

 

しかもいずれもカーソルがbeginとendの間に移動します。 

最後に•が勝手についてきてしまうのですが、これを消す手間は全部入力する手間に比べたらなんてことないのでこのオートコンプリート機能は使う価値があると思います。

 

というわけで今回はTeXworksのオートコンプリート機能の紹介でした。

初めまして/このブログについて

初めまして、ブルー佐藤です。

名前に特に深い意味はなく、ジャッキー吉川とブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」のもじりです。

森と泉に囲まれて静かに眠りたいものですね(?)

 

さて、そんな話はさておき、当ブログについて簡単に紹介したいと思います。

 

このブログに載せる記事は主に以下の3つの予定です。

・物理数学

・政治(主に国政)

・その他

 

それぞれについて簡単に説明すると、

 

物理数学分野では、物理学に応用される数学について、もしくは物理学そのものについて解説する予定です。

例えば、微分積分について速度と距離の関係と絡めながら、ベクトル解析について電磁気学と絡めながら説明していこうと考えています。

 

政治分野では、恐らく我々にとって国政が最も身近な場となるであろう国政選挙(衆院選参院選)を主に扱っていこうと考えています。

ただ、大事なのは選挙だけではない、ということを同時に伝えていきたいと考えています。

選挙で国会議員を送り出した我々は、その国会の動きを監視していかなくてはなりません。

とはいっても、日々の生活に追われてそんな余裕はありませんから、このブログを通じて、現在国会ではどのような法案について議論されているかなどをまとめて伝えていけたらよいなと考えています。

(これについては願望の域を出ず、実現できるかは正直わかりません。)

 

他は、皆さんに共有することでメリットがありそうな情報があれば、ジャンルを問わず記事にしていこうと思っています。

 

そんなわけで、皆様どうぞよろしくお願いいたします。