ブルー・佐藤のひとりごと

物理数学、政治など… 森と泉に囲まれて静かに眠りたい

2019年参院選を振り返る 1 ~組織票~

今回は「2019年参院選を振り返る」と題したシリーズの第一弾である。

その第一弾からややマニアックな内容ではあるが、ご了承いただけると幸いである。

ありふれたネタをやったってつまらないじゃないか。

というわけで今回のテーマは「組織票」である。

 

組織票」というとどのようなものを思い浮かべるだろうか。

有名なところだと公明党創価学会の関係だろう。

しかし創価学会員以外の方にも身近なところに組織票はある。

それは、労働組合である。

学生の方や一部の職種の方にはこれも身近な存在ではないかもしれないが、労働組合では特定の候補を支持していることが多い。

つまり労働組合がその候補の支持母体となっているわけである。

このブログをお読みになっている方の中にも、労働組合が推薦する候補に投票するように呼びかけられた経験を持つ方もいらっしゃるかもしれない。

 

さて、ここではその中でも地域性がはっきり表れていてわかりやすい例を紹介したいと思う。 

国民民主党礒崎哲史議員である。

礒崎氏は、元日産自動車社員であり、自動車総連の特別中央執行委員を努めた人物である。したがって自動車総連が支持母体となっている。

つまり自動車工場などのある市町村では得票率が高いのである。

では、2019年参院選のデータを基に、愛知県、栃木県、群馬県、神奈川県の各市町村における礒崎氏の得票率を地図で示したものをお見せする。

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愛知県

まずは愛知県、真ん中の北の方に大きく真っ赤なエリアがある。

そう、そこは何を隠そう豊田市である。

かつては「挙母(ころも)市」と名乗っていたが、1959年、トヨタの創業者である豊田氏から名前をとり、「豊田市」となった。ちなみに今でも豊田市中心部には「挙母」という地名が残っている。

豊田市トヨタやその関連企業に勤めている人が多く、10%近い得票率となっている。

豊田市は突出しているが、豊田市のみならず、愛知県は県全体としても自動車産業が盛んであり、どの市町村も全国と比較すると礒崎氏の得票率が高いのが特徴である。

 

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栃木県

続いて栃木県。

栃木の自動車メーカーと言えば本田技研工業である。

薄黄色くなっているところはホンダの拠点がある高根沢町で、隣接する自治体も比較的得票率が高い。

特に県庁所在地である宇都宮市は、人口が多く、他の職種に従事されている方も多いが、約3.4%というなかなかの得票率である。

その中でも11%超というひときわ目立つ数値を出したのが上三川町である。

実はここには日産の栃木工場がある。

日産と言えば礒崎氏の古巣であるため、労働組合による選挙運動はホンダ以上に活発であると思われる。

こちらも宇都宮市の得票率を引き上げる要因の一つであろう。

 

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群馬県

次は群馬県

こちらは太田市大泉町など、県南東部の得票率の高さが顕著である。

実はこの地域にはSUBARU(元・富士重工業)の生産拠点が集まっている。

中でも太田市の工場があるのは「スバル町」である。ここはSUBARUの工場以外は何もなく、居住者はいないそうだ。

 

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神奈川県


最後に神奈川県の例を紹介する。

愛知県、栃木県、群馬県と比べると県全体として得票率は低いが、県央部や横須賀市で得票率が高い傾向にあることがわかる。

厚木市伊勢原市の境には日産テクニカルセンター(NTC、住所は厚木市)が、横須賀市には日産追浜工場が、藤沢市にはいすゞの工場がある。

中でも伊勢原市と寒川町の得票率が高いが、これはあくまで総人口との関係で相対的に高く出ているものと思われる。

神奈川県の県央部は横浜や都内のベッドタウンとしての側面も大きく、また自動車業界以外にも様々な業界のメーカーの拠点が密集しているため、自動車メーカーの工場などがあっても、そこに従事している人の割合はそれほど高くはならず、得票率で比較すると、総人口が比較的少なめの自治体で高い傾向がある。(もっとも、これは神奈川県に限らずどこでも成り立つことではあるが、神奈川県ではその傾向が顕著である)

 

ここまで4県の例を挙げたが、組織票の影響力を実感していただけたことと思う。

元々の趣旨から逸れて自動車産業の紹介みたいになってしまった部分もあるかもしれないが、自動車メーカーの拠点があるところではっきりと得票率が高くなる礒崎氏は例として非常にわかりやすいと思ったので紹介させてもらった。

 

断っておくが、組織票を批判するつもりなど毛頭ない。

組織票」と聞いてあまり良いイメージを持たないかもしれないが、別に組織票自体は良いとか悪いとか言えるものではない。

しかし、最終的に誰に投票するかは個人の自由である。

匿名性も保証されている中、労働組合などの組織が推薦する候補に投票しなければならないなんてことはない。

特にこのような参院選の非拘束名簿式の比例代表制の選挙においては、その候補に票を投ずることにより、その候補が所属している政党・政治団体議席に貢献することになる。

もし、その候補が自分の支持していない政党・政治団体から立候補しているのであれば、再考すべきかもしれない。

 

そして、組織票とは無縁だと思っている皆さんも、「組織票」を作ってみてはいかがだろうか。

1人では1票の力しかないが、周囲に呼びかけることによってそれを10票にも、100票にもしていくことができる。

そしてそれがさらに外に広がっていけば、倍々ゲームの要領で10000票動かすことも夢ではないかもしれない。

政治への関心の低下は民主主義の崩壊につながる。

世間では政治の話はタブー視されがちかもしれないが、これからは積極的に政治の話をしてみるのも良いだろう。

(もしそれで友達を失っても責任は負いかねるが、政治的に意見が異なるぐらいで失ってしまうようなら、それはもはや友達と言えぬのではなかろうか)

 

次回のテーマは未定だが、2019年参院選から導入された特定枠などについて掘り下げたいと考えている。

それではまた。